下アゴ矯正で難聴改善? 学会が注意呼びかけ「医学的根拠ない」

下アゴ矯正で難聴改善? 学会が注意呼びかけ「医学的根拠ない」

 

 「下アゴ整顔術」と称する施術を受けると難聴が改善する――。こんなインターネット広告に対し、日本耳鼻咽喉(いんこう)科頭頸部(とうけいぶ)外科学会が注意を呼びかける声明を出した。年齢とともに垂れ下がった下顎(かがく)の矯正で改善するというが、学会は「医学的な根拠がない」と指摘し、聞こえが悪くなったら耳鼻咽喉科で適切な治療を受けるよう訴えている。

 

 声明によると、インターネット広告では、加齢によって下垂した下顎を矯正することで鼓膜張筋などの状態が良くなり、耳管機能が回復して(加齢性の)難聴が改善するなどとうたっているという。

 

 だが、学会は「加齢によって下顎が垂れ下がるという医学的な根拠はない」と主張。そのうえで、下顎の位置と鼓膜張筋などの状態に関連はない▽完全失聴や加齢性の難聴の大部分は、内耳の蝸牛(かぎゅう)にある音を感じる細胞や聴神経の障害によるもの――といい、施術でこうした障害が改善するとは考えられないと指摘している。

 

 同学会学術委員会の委員長で、新潟大の堀井新教授は「耳管機能の改善だけで治るとは考えられない。補聴器の使用のほか、鼓膜の状態によっては切開などの処置も必要になる。こうした広告に惑わされないよう注意が必要だ」と呼びかけている。【谷本仁美】